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バトルの計算と1ターンの流れ

エンジン開発者の解説 — ダメージ計算式とターン処理の順番

この記事の数字は、当サイトのバトルエンジン(バトルシミュレータリアルバトル全対戦機能と同一の計算式)で実際に計算した値です。前提(努力ポイントの振り方・性格・持ち物)はすべて明示しています。数字を丸めた説明や記憶ベースの「だいたいこう」は書いていません。

「なんで先制技じゃないのに先に動いたの?」「同じ相手なのにダメージが毎回違う」——対戦を始めたばかりだと、この2つでつまずくことが多いはずです。原因はどちらも「バトルは決まった順番で、決まった式で処理されている」というシンプルな事実にあります。この記事では、PchamDBのバトルエンジンが実際にどう計算しているかを、実数値つきで最後まで見ていきます。

① 1ターンの完全な流れ

1ターンは、実は「技を出す」だけではありません。両者が行動を選んだあと、決まった大枠の順番で処理が進みます。

  1. 行動選択 — 両者が「技・交代・道具・逃げる」を同時に、相手に見えない状態で選ぶ。
  2. 交代・道具・逃げる — 技よりも先にすべて処理される。素早さがどれだけ低くても、交代は技より先に完了する。
  3. メガシンカ / ダイマックス / テラスタル — 交代のあと、技を出す直前に発動する。
  4. 技フェーズ — 優先度 → 素早さ(補正込み) → トリックルーム(発動時は逆転)の順で、1体ずつ技を実行する。
  5. ターン終了処理 — 天候ダメージ → 状態異常ダメージ(どく→やけど) → バインド継続 → 場・壁のカウント、という決まった順で処理される。

出典: Bulbapedia: Priority / The Cave of Dragonflies: Battle Mechanics。当サイトの実装根拠は社内資料「バトルの流れ_実機リファレンス.md」にまとめています。

技フェーズの中の順番(誰が先に動くか)

同じターンに両者が技を出す場合、上から順に判定されます。素早さは4番目で、優先度より下位の判定材料でしかありません。

  1. 技の優先度ブラケット(+5〜-7。高いほど先)
  2. せんせいのツメ・イバンのみ・クイックドロウなど、同ブラケット内の割り込み
  3. こうこうのしっぽ・あとだしなど、行動を遅らせる効果
  4. 補正込みの素早さ(トリックルーム時は逆順)
  5. 同速なら乱数
優先度ブラケット表(抜粋)
優先度技・効果の例
+2しんそく、であいがしら、フェイント、このゆびとまれ
+1でんこうせっか、アクアジェット、バレットパンチ、マッハパンチ、かげうち
0上記以外の通常技(じしん・だいもんじ・ムーンフォース など)
-6ほえる、ふきとばし、ドラゴンテール、ともえなげ
-7トリックルーム

実例1: 優先度は、素早さの差をまるごと無視して勝つ

検算済み

メタグロス(意地っ張り・こうげき32pt)が優先度+2の「しんそく」を、オンバーン(臆病・すばやさ32pt=最速)が優先度0の通常技を選んだ場合。

90メタグロスの実効すばやさ
192オンバーンの実効すばやさ

素早さだけで比べれば、192のオンバーンが90のメタグロスの2倍以上速く、先に動くはずです。しかし実際は——

メタグロスが先に動く。しんそくの優先度(+2)が、オンバーンの通常技(優先度0)より高いブラケットにいるため、素早さの比較にすら進まない。実際のダメージは62〜74(オンバーンの実数値HP160に対し約39〜46%)。もし素早さだけで順番が決まる技だったら、この一撃はメタグロスに届かなかった。

実例2: 「壁」は張るタイミングが1ターン遅れると、結果がまるごと変わる

検算済み

バンギラス(無振り)が「リフレクター」を、ガブリアス(意地っ張り・こうげき32pt)が「じしん」(物理・威力100)を選んだ同じターン。バンギラスの実効すばやさ(81)はガブリアス(122)より遅いので、リフレクターは技フェーズの中でガブリアスより後に処理される。

174〜206このターン(リフレクター未展開)のダメージ
87〜103次ターン以降(リフレクター展開後)のダメージ
バンギラスの実数値HPは175。このターンは壁が間に合わず、乱数16通りのうち15通りで瀕死になる(最小ロールの174だけが1残ってぎりぎり耐える)。壁が先に張られていれば87〜103で悠々と耐えられたのに、「張るのが1テンポ遅れた」だけで生死が入れ替わる。壁技を先に使うなら、自分の方が速いか(あるいは相手が交代してくる隙を突けるか)を必ず確認する必要がある。

② ダメージ計算の仕組み

ダメージ計算は、次の順で1つずつ掛け算・端数処理をしていく積み上げ式です。

// 基礎ダメージ 基礎ダメージ = floor( (2×レベル÷5+2) × 威力 × 攻撃 ÷ 防御 ÷ 50 + 2 ) // そこに以下を左から順に掛けていく(各ステップごとに端数処理) × 複数対象(ダブル0.75) × 天候 × 急所(1.5倍、スナイパー2.25倍) × 乱数(85〜100%を16刻み) × タイプ一致(STAB) × タイプ相性 × やけど(物理0.5倍) × その他(いのちのたま等)

端数処理は2種類が混在していて、ここを勘違いすると自分で計算した数字とサイトの数字がずれます。

実例3: 実在する組み合わせの16通り(乱数85〜100%)

ガブリアス(意地っ張り・こうげき32pt)の「じしん」(物理100・タイプ一致) → マスカーニャ(無振り・くさ/あく=じめん半減0.5倍)。攻撃実数値200・防御実数値90・HP実数値151
乱数%858687888990919293949596979899100
ダメージ63636465666667686969707172727374

最小63〜最大74の16通り。HP151に対しては最大でも74なので1発では倒れず、最小63を2発重ねても126で足りない。3発で確定して倒せる(3発目は63〜74のどのロールでも151を上回る)。これが後述する「確定数」の考え方です。

実例4: 天候・急所を重ねると、どの順で掛かるか

威力補正(天候など)は基礎ダメージの「威力」段階で、急所は基礎ダメージが出たあとの補正段階で掛かります。同じ技でも重なる補正の数だけ結果が変わることを、実データで比べてみます。

ラウドボーン(臆病・とくこう32pt)の「だいもんじ」(特殊110・ほのお) → キラフロル(無振り・どく/いわ=ほのお等倍)。HP実数値158
条件ダメージ(乱数16通り)HP158に対する割合
通常(晴れなし)50〜5932〜37%
晴れ(威力1.5倍が乗る)75〜8847〜56%
晴れ + 急所(1.5倍)112〜13271〜84%

晴れだけで通常時の約1.5倍、そこに急所が重なるとさらに1.5倍。3つの補正がすべて掛け算で積み上がるので、「たった1個の補正」でも最終的な結果は大きく動きます。

③「確定数」と乱数%の正しい読み方

対戦勢が「3確」「2確1」のように言う確定数とは、「乱数16通りのうち最も不利な出目(85%)でも、その回数までにHPを上回れるか」を指します。逆に言うと、確定数が3なら「2発で終わる可能性はゼロ」ということです。

検算済み

カイリュー(意地っ張り・こうげき32pt)の「ドレインパンチ」(物理75・かくとう) → ゲッコウガ(HP32pt)。かくとうはあく複合(みず/あく)に効果ばつぐんで、実質2倍が乗る。

134〜158ダメージ(乱数16通り)
179ゲッコウガの実数値HP
最小ロール(134)を2発重ねても268で179を超え、最大ロール(158)を2発重ねても316で超える。乱数16通りのどの出目でも2発で倒れる=「確定2発」。逆に1発で倒れることは無い(最大158でもHP179には届かない)。

ここで注意したいのは、「80%くらい削れた」という感覚と「確定数」は別物だということです。ダメージが80%前後でも、相手のHPと詰めの悪い乱数が重なれば1発足りずに次のターンに回されることがあります。感覚ではなく、実数値とダメージ範囲を突き合わせて確認するのが安全です。ダメージ計算ツールを使えば、自分の育成したポケモン同士の確定数を、この記事と同じ計算式でそのまま調べられます。

自分の育成で確定数を確かめる実数値・持ち物・急所条件を入れて、確定何発かをそのまま計算できます。
ダメージ計算ツールを開く →

④ よくある誤解 3つ

ここからは、対戦の会話でもよく話題に出るのに、実は正確に説明できる人が少ないポイントを3つ、エンジンの実装をもとに整理します。

✕ よくある誤解

「やけどは、こんじょう(Guts)持ちにはただの弱点隠しにしかならない」

◯ 実際は

こんじょうは状態異常の間、物理こうげき実数値そのものを1.5倍にする特性です。やけどによる物理ダメージ半減を無効化するのは、そのうちの一部の効果にすぎません。つまり「やけど+こんじょう」は弱点を隠す組み合わせではなく、状態異常の中でも一番相性が良い組み合わせです。

カビゴン(意地っ張り・こうげき32pt)の「ドレインパンチ」(物理75) → ガブリアス(無振り)
状態攻撃実数値ダメージ(16通り)
通常時17845〜53
やけど(こんじょうなし)17822〜26 (物理0.5倍)
やけど + こんじょう26766〜78 (半減を無効化+1.5倍)

当サイトのエンジンでも、こんじょうの「1.5倍ブースト本体」は2026-07-19に実装した機能です(Bulbapedia「Guts (Ability)」裏取り済み)。それまではやけど半減の無効化しか実装しておらず、本来の火力ブーストが丸ごと欠けていました。特性ひとつでも、細部まで実装されているかどうかで結果が大きく変わる例です。

✕ よくある誤解

「いかくを無効化できるのは『どんかん』だけ」

◯ 実際は

いかくは技ではなく「相手からの能力ランク低下」の一種として処理されるため、ランク低下を防ぐ特性・道具はすべていかくにも効きます。当サイトのエンジンで実装している範囲だけでも、これだけの種類があります。

  • どんかん — いかくそのものを無効化(専用の分岐)
  • クリアボディ / しろいけむり — 相手起因のランク低下を丸ごと無効化
  • はとむね — ぼうぎょのランク低下だけを無効化(いかくの対象がぼうぎょ以外なら通る)
  • ミラーアーマー — 無効化ではなく発動源(相手)へ跳ね返す
  • クリアチャーム(持ち物) — 相手起因のランク低下を無効化
  • まけんき / かちき — 無効化しない。むしろいかくを受けると、こうげき(まけんき)・とくこう(かちき)が+2される

まけんき・かちきは「いかくが効かない」のではなく「いかくを受けると得をする」特性です。無効化系と混同すると、実際の対面で誤った読みをしてしまいます。

✕ よくある誤解

「急所は当たれば必ずダメージ1.5倍」「急所率はどの技でも1/16くらい」

◯ 実際は

急所の発生確率はランク制で、技やアイテムでランクを上げるほど上がります。倍率も一律1.5倍ではなく、スナイパー(Sniper)持ちは2.25倍になります。

急所ランクと発生確率
急所ランク発生確率主な要因
01/24通常時
11/8きあいだめ・ピントレンズ・高急所技(つじぎり等)
21/2上記の組み合わせ
3以上確定複数条件の重複
マニューラ(意地っ張り・こうげき32pt)の「つじぎり」(物理70) → サーフゴー(無振り)。急所倍率だけを比較
条件ダメージ(16通り)
急所なし132〜156
通常急所(1.5倍)198〜234
スナイパー急所(2.25倍)296〜350

この記事の計算はすべて、当サイトのバトルエンジン(real_battle_simulator.htmlのcalcDamage関数)を Node.js から直接呼び出して算出しています。表示上の数字と食い違いがあれば、育成条件(努力ポイント・性格・持ち物・特性)の違いが原因です。ダメージ計算の細部をもっと自由に試したい方はダメージ計算ツール、素早さの実数値ラインは素早さ調整の考え方もあわせてどうぞ。